TOP > 住宅地盤の基礎知識 > Ⅶ.効果的な地盤改良のやり方
地盤が悪いときで、基礎を補強するだけでは十分でない場合、地盤自体を補強して丈夫にする方法もあります。これを地盤改良といいます。
現在おもに用いられる宅地の地盤改良工法には、表層地盤改良と柱状地盤改良とがありますが、地盤の状態によって適切な工法を選ばなければなりません。
地盤改良は、地盤調査により得られたデータをもとに、一番効果的な方法を専門家のアドバイスによって行うようにしましょう。
お医者さんにたとえるなら、地盤調査は診察です。効果的な地盤改良の方法を考えることは、効果的な治療方法を考えることと同じで診断にあたります。 そして、実際に地盤固化材を使って改良工事をすることは、薬を使った治療ということになるでしょう。
ダンプカーで田んぼの中を走ろうとする場合、表面に鉄板を敷いたり砂利砕石を敷き詰めるなどの処置をします。
田んぼをダンプカーが走れないのは表面が軟らかく、地盤にダンプカーを支える固さが足りないからです。
それでは表面に鉄板や砂利砕石を敷くことで、ダンプカーを支えられるようになるのは何故でしょう。 それは、鉄板や砂利砕石がダンプカーからタイヤを通して田んぼの地盤に伝わる荷重を分散し、小さくしてしまうからです。
これらは舗装工学の基礎になる考え方で、荷重の伝わる範囲を砕石やコンクリートやアスファルトで固くしておけば、 その下が軟らかくても上の荷重を支えることができるわけです。
住宅の基礎においてもまったく同じ事がいえ、基礎からの荷重が伝わる地表部を固くすることでその荷重を支えることができるのです。 つまり、表層地盤改良は基礎下の舗装の役目をしているわけです。
この工法の特徴は、硬い板状の人工地層を作ることで、建物を支える力(支持力)が大きく強くなることです。 また同じ厚さなら棒より板のほうが曲げにくいように、板状に造成した地盤は面内剛性という曲げる力に対する抵抗力が大きくなるために不同沈下を起こしにくくなることです。
建物荷重が基礎を通じて地中に及ぶ範囲は、土質の種類によっても異なりますが、基礎幅の4倍程度下方では、基礎直下に比べて10分の1程度にまで、 また、2倍程度下方では5分の1程度にまで小さくなります。
住宅用の普通の基礎(5tf/m2)であれば基礎の下方1mではその荷重は約5分の1程度しか伝わっていません。 つまり、基礎下に仮に1mの表層地盤改良を施工するとすれば、その下の地盤支持力が1tf/m2以上あれば、十分にその建物を支えることができるわけです。
原地盤での力の伝わり方をパチンコ玉を使って説明すると、次のA図のようになります。
パチンコ玉を1列に5段積み上げておき、ある玉を10の力で押します。その下の玉には半分の力が伝えられ、その下の玉はさらにその半分が伝えられます。 一番下の玉には初めに加わった地点の直下でも40%程しか伝わらずだんだん力が小さくなっていることが判ります。
このように下に行くほど力が拡散し、その力が小さくなってゆくことを応力の地中分散と呼んでいます。
パチンコ玉の1個1個が接着剤で固く結合しているとすれば、その地中分散効果はさらに大きくなりますから、左のB図のようになり、力は改良地盤の中を横方向に大きく分散します。
地盤改良では、固化材によって土粒子を結合させることで同じ効果をねらっているのです。
また改良地盤は上層が固く下層が軟らかい2層地盤となり、単一地盤に比べて、より下方まで応力が伝わりにくい構造を持つことになります。
表層地盤改良をすると振動が伝わりにくくなります。交通振動の大きな道路や電車の沿線ではかなりの効果を発揮します。
また地震の時の揺れも幾分抑えられ、液状化現象などにも効果があることが分かっています。
表層地盤改良は、セメント系の土質固化材を現地盤の土としっかり混ぜ合わせ、それを締め固めるという方法で施工します。
通常1緕・あたり、100kg前後の固化材をバックホーという機械を用いて混合し、基礎が載る範囲を平らな板(改良厚さは普通1.m~2.0m)のような形に固めてやる方法です。
次に示すような地盤では表層地盤改良などでは不十分で、柱状地盤改良が効果を発揮します。
1.地層が傾いていて大きな不同沈下量が予想される場合
2.地下水位が地表面近くにあり、粒度が均等な砂地盤で、表層改良では固まりにくい場合
3.柱状改良の方が表層改良より施工の際の振動が少ないので、住宅密集地のように特に振動に気をつけねばならない場合
4.大きな不同沈下が予想される事から、杭基礎方式を採用したいがN値10程度の地層しかなく、杭の支持層としては不十分な場合でも、柱状地盤改良なら支持層にできる場合
5.原地盤の強さと改良体の強さを複合させて地盤全体の強さを増やしたい場合
柱状地盤改良は右図のような先端に攪拌翼を取り付けた穿孔装置を持つ機械を使って施工します。
はじめに改良予定の深さまで空堀りし、攪拌翼で土をよくほぐします。別に用意したミキサープラントで土質固化材を水に溶かしてミルク状にしておきます。
セメントミルクをポンプで孔の先端へと送り込み、攪拌翼が回転して土と混合します。
攪拌翼を回転させながら少しづつ引き揚げると、円柱状の固化材と土の混合体(ソイルセメントコラムといいます)が作られます。
1週間ほどするとこのソイルセメントコラムは堅く固まりますから、円柱の周面に働く摩擦力と、円柱先端に働く先端支持力とによって荷重を支えることができるのです。
阪神淡路大震災では多くの建物が倒壊し、5,000人以上の犠牲者を出すという大惨事になってしまいました。
社団法人セメント協会では地盤改良された施設構造物についてその被害状況を調べ、次のように報告しています。
調査件数は、ビル、住宅、道路などの93件です。(表層地盤改良37件、柱状地盤改良54件、その他2件)
上部構造に被害が見られたのは2件だけで、それも壁の亀裂程度の軽微なもので、使用不能に至るような被害はまったくなかったとされています。
周辺との被害比較による改良効果では、顕著に見られるもの29件、幾分見られるもの32件で、実に93件中61件で何らかの形で周辺の被害状況とに差が見られたとされています。